土曜日のお出かけに持っていった本は、旅行のお供には最も適さない本だった。
神経発火パターン〜脳内イメージを記述する言語の発明とナノテクにより、脳に発生した障害をリカバーできるようになった近未来に、そのテクノロジーによるさらなるイノベーションを起こそうとする女性研究者の「物語」の物語。彼女はプロローグで苦痛に満ちた死をむかえる。以降の数百ページでは、彼女がいかに生き、その瞬間に到達したかが物語られるわけだが…。
リアリティのあるテクノロジーの描写や、肉体と精神(人格)と機械のインターフェースに関する考察なんかは静かにエキサイティングだ。情報工学的なアイディアも面白い。物語としての構成・構造も隅々まで計算されていて素晴らしい。なによりも語られるテーマの鋭さが。けど、そのへんに集中して読み通し、「これはすごい!」と叫ぶには、ヲレの神経は弱すぎるみたい。
「痛い」んだもの。
読んでて、病気の描写がリアルすぎて、発作の描写が一段落するまでこちらも息をつくことができない。自分の内蔵の動きがおかしいような錯覚に陥る。血の臭いがするような気がする。痛みや苦痛の描写から、自分が死ぬときの様を想像して胸が苦しくなる。
読み終わって寝たら、案の定悪夢を見て夜中に目ぇ覚ましたわ。
救いがあるかというと、これが、ほぼ、ない。いや、あるんだけど、それを救いと言っていいのか、ちょっと迷いがある。アマアマなSF読みとしては、なんか甘っちょろい甘味料加えといてもらって、安い感動でもって涙の一粒でもこぼさせてもらったほうがラクではあるんだよなあ。
しかし、「あなたのための物語」というタイトルに、どれほどの意味が重畳されていることやら。お見事でした。今年のベストワン。
もドゾー。